※本記事は、行政書士として開業した個人の実体験をもとにした記録です。必要なものは、取扱業務・事務所の形態・所属する行政書士会・運用方法によって変わります。
行政書士として開業する前は、「まず何を買えばいいのか」が気になります。
私も開業前後に、机、椅子、職印、表札、プリンター、書庫、文房具など、いろいろなものを揃えました。どれも開業準備らしいものですし、実際に必要になるものもあります。
ただ、開業してから実感したのは、後から効いてくるのは大きな備品よりも、実務を止めないための小物やサービスだったということです。
開業時点でどこまで費用を見込むかと、開業後に必要性が見えてから追加するものは、分けて考えると整理しやすくなります。
たとえば、書類を作るOffice環境、PDFを扱う環境、データのバックアップ、郵送まわりの住所印や封筒、レターパックが入る郵便受け、業務によって必要になる電子署名・電子証明書などです。
この記事では、行政書士開業後に「結局必要だったもの」「買っておいてよかったもの」「後回しでよかったもの」を、実体験ベースで整理します。
- 開業後に増えるのは、大きな備品より実務環境
- Office・Microsoft 365まわりは、ばらばらに考えすぎない
- PDF編集・変換環境は、許認可業務で必要性が見えやすい
- バックアップ環境は、早めに考えた方がよい
- AIツールは必須ではないが、文章作成や整理には便利
- 住所印は、郵送や書類記入が増えると地味に効く
- 名入り封筒は便利だが、最初は無地でもよい
- 郵便受けは、レターパックが入るか確認しておく
- 電子署名・電子証明書は、業務が決まってからでもよい場合がある
- 挨拶用タオルは、配る相手が決まってからでよい
- 開業後に買ってよかったもの・後回しでよかったもの
- まとめ:開業後に増えるのは、地味だけど実務に効くもの
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開業後に増えるのは、大きな備品より実務環境
開業前は、どうしても目に見える備品に意識が向きます。
机、椅子、職印、表札、プリンター、書庫。このあたりは、いかにも開業準備という感じがします。
しかし、実際に業務を始めると、後から必要になるのは次のようなものが中心でした。
- 書類を作る環境
- PDFを編集・変換する環境
- データを保存・バックアップする環境
- 郵送や事務処理に使う細かい備品
- 経費や証憑を記録する仕組み
- 業務によって必要になる電子申請まわりの環境
つまり、開業後にお金がかかるのは「事務所をそれらしく見せるもの」よりも、「日々の実務を止めないためのもの」です。
売上がまだ少ない時期でも、開業費、交通費、会務の日当、少額の支出、現金受領などは発生します。後から思い出して整理しようとすると曖昧になりやすいので、証憑管理と経費記録は早めに形を決めておいた方が楽です。
Office・Microsoft 365まわりは、ばらばらに考えすぎない
開業前は、正直「Officeはなくてもいいのでは」と思っていました。
Googleドキュメントやスプレッドシートでも、簡単な表やメモ、下書きはできます。自分用の資料だけなら、それで足りる場面もあります。
ただ、行政書士業務では、官公署の様式がWordやExcel形式で配布されていることが多いです。これを別のソフトで開くと、罫線、セル幅、改行位置、余白、印刷範囲が微妙に崩れることがあります。
自分用のメモなら多少崩れても問題ありません。しかし、提出書類やお客様に見せる書類でレイアウトが崩れると、直す時間の方がもったいなく感じます。
また、Office、OneDrive、CopilotのようなAI機能を別々に考えると、話が散らかりがちです。実務上は、Word・Excelを使う、データをバックアップする、文章作成を補助する、というMicrosoft系の環境としてまとめて考えると判断しやすいです。
もちろん、Microsoft 365が全員に必要という意味ではありません。すでにGoogle系で業務環境を作っている人や、AIは別サービスを使いたい人もいます。
ただ、行政書士業務でWord・Excel様式に触れる機会が多いなら、Office環境をどうするかは早めに決めておく価値があります。
PDF編集・変換環境は、許認可業務で必要性が見えやすい
行政からダウンロードできる様式は、WordやExcelだけではありません。PDF形式で配布されていることもあります。
PDFのまま入力できる場合もありますが、表形式のものを編集したい場合や、Excelで加工したい場合は、PDFをExcelやWordに変換したくなる場面があります。
私は現時点ではAdobe系の有料プランを本格的に使っているわけではありません。ただ、許認可業務を扱っている行政書士の先生から、「PDFをExcelに戻せる環境があると便利」という話を聞きました。
無料ツールで足りる場面もありますが、変換精度やレイアウトの再現性には限界があります。表形式のPDFは、変換後に崩れることもあります。
開業直後から全員に必要とは思いません。ただ、許認可系の業務を扱う予定があるなら、PDF編集・変換環境は一度検討しておいた方がよいです。
後述する電子署名・電子証明書まわりでも、PDF編集ソフトがあると便利な場面があります。
バックアップ環境は、早めに考えた方がよい
行政書士は、書類データを扱います。
開業直後は件数が少なくても、見積書、請求書、申請書、本人確認書類、業務メモ、研修資料など、データは少しずつ増えていきます。
そのデータをPC本体だけに保存していると、PCが壊れたときに困ります。
クラウドストレージを使うのか、外付けHDDも併用するのか、どこまで自動化するのかは人によって違います。ただ、ローカル保存だけで運用するより、バックアップの考え方を持っておく方が安心です。
個人情報を扱う以上、共有設定やパスワード管理には注意が必要です。それでも、何も備えないよりは、復旧できる仕組みを作っておいた方が現実的です。
外付けHDD
クラウドだけでなく、手元にもバックアップを残したい場合の候補です。PCトラブルやデータ保管に備えて、最低限のバックアップ先を用意したい人向けです。
AIツールは必須ではないが、文章作成や整理には便利
AIツールは、行政書士開業に必須の道具ではありません。
AIがなくても開業はできます。ただ、使い始めると、文章作成、調べものの視点出し、段取り整理、メール文、ホームページ文章のたたき台作りなどでかなり便利です。
もちろん、行政書士業務では正確性が重要です。AIの出力をそのまま使うのではなく、制度、法令、申請要件は必ず公式情報や一次情報で確認する必要があります。
OfficeやOneDriveを使うなら、Microsoft系のAI機能とまとめて検討する選択肢もあります。一方で、ChatGPTなど別サービスを使う方が合う人もいます。
大事なのは、AIを「判断を丸投げするもの」ではなく、「文章や段取りを整える補助」として使うことだと思います。
住所印は、郵送や書類記入が増えると地味に効く
開業後に買った地味なものとして、住所印があります。
住所印は、事務所名、住所、電話番号などをまとめて押せる印鑑です。
必須ではありません。開業前に必ず買う必要もありません。
ただ、封筒や書類に毎回事務所情報を書く場面が増えると、手書きは思った以上に面倒です。同じ情報を何度も書くなら、住所印があるとかなり楽になります。
職務上請求書で使う方もいるようですが、私はそこは手書きしています。使いどころは人によります。
レターパックの場合は、住所印より宛名シールの方が便利な場面もあります。郵送の量や使う封筒に合わせて、無理なく選べばよいと思います。
住所印
郵送や書類への事務所情報記入が増えてきた人向けの候補です。最初から必須ではありませんが、同じ情報を何度も書く負担を減らしたい場合に検討できます。
名入り封筒は便利だが、最初は無地でもよい
開業後に、名入り封筒も作りました。
名入り封筒は、事務所名や住所が印刷された封筒です。見た目が整いますし、郵送時に手書きやシール貼りをする手間も減ります。
ただし、開業直後から大量に作る必要はないと思います。
開業直後は、取扱業務、肩書き、住所表示、電話番号、ホームページの表記などを変更したくなる可能性があります。最初に大量発注すると、あとで使いにくくなることがあります。
最初は無地封筒と住所印、または宛名シールでも十分です。郵送が増えてから名入り封筒を作るくらいでよいと思います。
名刺と同じで、紙のツールは「作って終わり」ではなく、事務所の見せ方や業務内容が固まってから整える方が失敗しにくいです。
名入り封筒
郵送が増えた段階で、事務所名入り封筒を検討する人向けの候補です。開業直後から大量に作るのではなく、郵送量や表記が固まってからの方が安心です。
郵便受けは、レターパックが入るか確認しておく
開業後に買ったものとして、郵便受けもあります。
もともと設置されていた郵便受けは、レターパックがギリギリ入るサイズでした。入れるのが大変なのか、折れて配達されることがありました。
行政書士業務では、郵送で書類をやり取りすることがあります。
- レターパック
- 角2封筒
- 厚みのある書類
- 重要な郵便物
こういったものを扱う可能性があります。
既存の郵便受けが小さいと、曲げて配達されたり、不在時に受け取れなかったりして不便です。
全員が買い替える必要はありません。すでに大きな郵便受けがあるなら、そのままで大丈夫です。
ただ、自宅開業や小規模事務所の場合は、レターパックや角2封筒が入るかどうかを、開業前後に一度確認しておくとよいです。
レターパック対応郵便受け
レターパックや角2封筒が入る郵便受けを確認したい人向けの候補です。既存ポストが小さい場合だけ検討すれば足ります。
電子署名・電子証明書は、業務が決まってからでもよい場合がある
開業後に、行政書士用の電子署名・電子証明書まわりも必要になりました。
電子申請をする業務を扱う場合、電子証明書や電子署名の環境が必要になることがあります。
たとえば、自動車保有関係手続のワンストップサービス、電子定款の認証、電子契約などです。
ただし、これはすべての行政書士が開業直後に必ず必要というものではありません。扱う業務によって必要性が変わります。
業務内容が決まっていない段階では、後回しでもよい場合があります。
一方で、取得には時間がかかることがあります。電子申請を前提にする業務を扱うなら、必要になってから慌てないように、早めに確認しておいた方がよいです。
また、案件によっては、電子証明書を持っている行政書士と共同受任するという選択肢もあります。自分で最初からすべて揃えるかどうかは、扱う業務と受任体制に合わせて判断すればよいと思います。
挨拶用タオルは、配る相手が決まってからでよい
開業後に挨拶用のタオルも購入しました。
ただ、これは正直、かなり余っています。
開業時の挨拶回りをしっかりする人や、地域密着で営業する人なら使う場面があると思います。しかし、私の場合は思ったほど配る機会がありませんでした。
オンライン中心、来客や訪問が少ない、挨拶回りをあまりしない、配る相手が具体的に決まっていない。こういう場合は、急いで作らなくてもよいと思います。
今なら、配る相手や場面が具体的に決まってから作ります。なんとなくで大量に作るのはおすすめしません。
名入れタオル
挨拶回りをする相手や場面が具体的に決まっている人向けの候補です。全員向けではなく、配る予定がある場合だけ検討すればよいと思います。
開業後に買ってよかったもの・後回しでよかったもの
ここまでを整理すると、私の中では次のような分類になります。
買ってよかったもの
- Office環境
- バックアップ環境
- 住所印
- 郵便受け
業務によって必要になるもの
- PDF編集・変換ソフト
- 電子署名・電子証明書
- AIツール
- 名入り封筒
後回しでよかったもの
- 挨拶用タオル
- 大量の名入り封筒
- 高額なサブスク
- 使うか分からない業務用サービス
開業後に必要になるものは、物やサービスだけではありません。
実際に依頼を受ける段階になると、サービス案内、委任状、確認書類、料金説明、納品時の案内など、依頼者に渡す資料も必要になります。
これらは業務内容に合わせて自分で作る必要がありますが、開業初期は「どんな資料を用意しておけばよいのか」が見えにくい部分です。
まとめ:開業後に増えるのは、地味だけど実務に効くもの
行政書士開業後に買うものは、開業前に想像していたより地味でした。
大きな什器や立派な備品を買い足すというより、Office、PDF編集環境、バックアップ、住所印、封筒、郵便受け、電子署名まわりのような、実務を回すためのものが中心です。
特に、開業前には不要だと思っていたOfficeは、実際に行政のWord・Excel様式を扱うようになると必要性を感じました。
郵便受けのように、開業準備記事ではあまり見かけないものでも、実際には困ることがあります。レターパックが折れて配達される問題は、かなり現実的な盲点でした。
一方で、挨拶用タオルのように、思ったほど使わなかったものもあります。
開業後に買うものは、「あった方がよさそう」で買うより、「実際に困ったら買う」くらいで十分なものも多いです。
最初から全部揃える必要はありません。ただ、実務が始まると、物よりもサブスク、データ管理、郵送、証憑管理まわりにお金と手間がかかることは知っておくとよいと思います。
開業前から開業直後までの準備を、時期・期限・確認先付きで確認したい場合はこちら。