行政書士開業に、高度なITスキルは必須ではありません。
プログラミングができる必要もありませんし、パソコンに詳しい人でなければ開業できない、ということもありません。
ただし、行政書士業務では、Word、Excel、PDF、メール、ファイル管理などを使う場面がかなりあります。
官公署の様式に入力する、依頼者向けの案内文を作る、PDFを保存する、メールにファイルを添付する、クラウドにバックアップする。
こうした作業で毎回止まってしまうと、業務そのものよりも事務処理で疲れてしまいます。
この記事では、行政書士開業前に確認しておきたいパソコンスキルを、Word・Excel・PDF・メール・ファイル管理・情報セキュリティに分けて整理します。
また、独学で足りる人と、パソコン教室やMOS対策講座を使った方が早い人の違いについてもまとめます。
行政書士に高度なITスキルは必要ない。でも苦手すぎると困る
行政書士業務で必要になるパソコンスキルは、専門職の中ではそこまで高度ではないと思います。
ただし、「最低限の事務処理ができること」はかなり大事です。
たとえば、次のような作業です。
- Wordで書類を作る
- Excelで一覧表や計算表を作る
- 官公署の様式に入力する
- PDFを保存・結合・分割する
- メールにファイルを添付する
- ファイル名を付けて整理する
- クラウドや外付けストレージにバックアップする
- 会計ソフトや業務ソフトを使う
どれも一つひとつは難しい作業ではありません。
ただ、開業後は、営業、問い合わせ対応、業務調査、書類作成、経理、ホームページ更新などを一人で行う場面が増えます。
そのときに、パソコン操作で毎回つまずくと、かなり負担が大きくなります。
行政書士業務で使う可能性が高いもの
行政書士業務で使う可能性が高いのは、主に次のようなものです。
- Word
- Excel
- PDFソフト
- メールソフト
- ブラウザ
- 会計ソフト
- 業務専用ソフト
- クラウドストレージ
- スキャナー
- プリンター
- オンライン申請システム
すべてを高度に使いこなす必要はありません。
大事なのは、「自分が何をしているかわからないまま操作する状態」を減らすことです。
行政書士業務では、依頼者の個人情報や重要書類を扱います。
そのため、ただ入力できるだけでなく、保存場所、ファイル名、バックアップ、共有方法なども含めて、最低限の管理ができる状態にしておく必要があります。
Wordで最低限できた方がいいこと
行政書士業務では、Word形式の書類や、自分で作る案内文、委任状、理由書などを扱う場面があります。
Wordで最低限できた方がいいことは、次のとおりです。
- 文字入力
- フォントサイズや太字などの基本的な書式設定
- 表の作成・編集
- 余白の調整
- 改ページの調整
- ヘッダー・フッターの確認
- ページ番号の設定
- PDF化
- 印刷前のレイアウト確認
特に、表・余白・改ページは地味に重要です。
見た目を整えるためにスペースを連打したり、改行で無理やり位置を合わせたりすると、あとで崩れやすくなります。
完璧に使いこなす必要はありませんが、Wordの基本機能で整える感覚は持っておいた方がいいです。
Wordのチェック項目
開業前に、次の作業が自分でできるか確認しておくとよいです。
- 依頼者向けの案内文を1ページで作れる
- 表入りの書類を作れる
- 余白を調整できる
- 不要な空白ページを消せる
- PDFとして保存できる
- 印刷前にレイアウト崩れを確認できる
ここで毎回止まる場合は、Wordの基本操作を一度まとめて確認しておいた方がよいと思います。
Excelで最低限できた方がいいこと
Excelは、官公署からExcel形式で公開されている申請書、資料、実費計算、進捗管理などで使う可能性があります。
Excelで最低限できた方がいいことは、次のとおりです。
- 表の作成
- セルの書式設定
- フィルター
- 並べ替え
- SUMなどの基本関数
- 印刷範囲の設定
- シートのコピー・移動
- CSVファイルの扱い
- 簡単な入力規則の理解
行政書士業務では、複雑な関数を大量に使うよりも、表を崩さず、見やすく、必要な形で出力できることの方が重要です。
たとえば、戸籍収集の実費計算、依頼者一覧、案件管理、売上管理などは、Excelで簡単に作れます。
会計ソフトや業務管理ツールを使う場合でも、CSVでデータを出し入れする場面があるかもしれません。
Excelのチェック項目
開業前に、次の作業が自分でできるか確認しておくとよいです。
- 一覧表を作れる
- 金額の合計を出せる
- フィルターで必要な行だけ表示できる
- 印刷範囲を調整できる
- 横長の表を見やすく印刷できる
- CSVファイルを開いたことがある
- セルの表示形式を変更できる
Excelに苦手意識がある場合でも、まずはこのあたりができれば十分です。
逆に、このあたりで毎回つまずく場合は、開業後に小さなストレスが積み重なりやすいと思います。
PDFで最低限できた方がいいこと
行政書士業務では、PDFをかなり使います。
官公署の様式、依頼者への送付資料、控えの保存、スキャンデータ、電子申請の添付資料など、PDFは避けて通れません。
PDFで最低限できた方がいいことは、次のとおりです。
- PDFを開く
- WordやExcelからPDF化する
- 必要なページだけ印刷する
- 複数のPDFを結合する
- PDFを分割する
- スキャンしたPDFを保存する
- ファイルサイズを確認する
- 簡単な注釈や書き込みをする
PDFは「見るだけ」ではなく、保存・整理・結合・分割・印刷までできるとかなり楽になります。
特に、複数の書類を1つのPDFにまとめる、必要なページだけ抜き出す、控えとして保存する、といった作業はよく出てきます。
PDFのチェック項目
開業前に、次の作業ができるか確認しておくとよいです。
- Word文書をPDFにできる
- Excel表をPDFにできる
- 複数ページのPDFを印刷できる
- 必要なページだけ印刷できる
- 複数のPDFを結合できる
- スキャンしたPDFをわかりやすい名前で保存できる
PDFソフトについては、無料で足りる場面もあります。
ただし、結合・分割・編集をよく使う場合は、有料ソフトを検討してもよいと思います。
メール・ファイル管理で最低限できた方がいいこと
意外と重要なのが、メールとファイル管理です。
行政書士業務では、依頼者、他士業、官公署、取引先などとメールでやり取りする場面があります。
メールで最低限できた方がいいことは、次のとおりです。
- 添付ファイルを付ける
- 添付ファイルを保存する
- 件名をわかりやすく付ける
- 返信・転送を使い分ける
- CC・BCCを理解する
- 迷惑メールやフィッシングメールに注意する
ファイル管理で最低限できた方がいいことは、次のとおりです。
- ファイル名をわかりやすく付ける
- フォルダで整理する
- 最新版がどれかわかるようにする
- ローカル保存とクラウド保存を区別する
- バックアップを取る
- 共有リンクの公開範囲を確認する
行政書士は個人情報を扱います。
「どこに保存したかわからない」
「どのファイルが最新版かわからない」
「共有リンクを誰でも見られる設定にしていた」
こういう状態は避けたいです。
パソコンスキルというとWordやExcelをイメージしがちですが、実務ではファイル管理の方が重要な場面もあります。
メール・ファイル管理のチェック項目
開業前に、次の作業ができるか確認しておくとよいです。
- メールにPDFを添付できる
- 添付ファイルを任意のフォルダに保存できる
- 案件ごとにフォルダを分けられる
- ファイル名のルールを決められる
- バックアップ先を説明できる
- クラウド共有リンクの公開範囲を確認できる
このあたりに不安がある場合は、開業前に整理しておくことをおすすめします。
情報セキュリティの考え方は知っておいた方がいい
行政書士に高度なIT技術は不要でも、情報セキュリティの考え方は必要です。
最低限、次のようなことは確認しておきたいです。
- パスワード管理
- 2段階認証
- ウイルス対策
- バックアップ
- クラウド保存の共有設定
- 個人情報を含むファイルの扱い
- フィッシングメールへの注意
- 古い端末やUSBメモリの管理
行政書士業務は、紙だけで完結するように見えて、実際にはメール、PDF、クラウド、会計ソフト、業務ソフトなどを使います。
苦手な人ほど、開業前に最低限の考え方を確認しておいた方が安全です。
情報セキュリティのチェック項目
開業前に、次の状態になっているか確認しておくとよいです。
- 重要なアカウントに2段階認証を設定している
- パスワードを使い回していない
- パソコンのログインパスワードを設定している
- バックアップ先を決めている
- 個人情報を保存する場所を決めている
- 共有リンクを不用意に公開しない
- 怪しいメールを開かない意識がある
完璧なセキュリティ対策を最初から作るのは難しいです。
ただし、「何が危ないのか」を知らないまま業務を始めるのは避けた方がいいです。
学習方法の選び方
行政書士開業にMOS資格が必須というわけではありません。大事なのは、資格名よりも、Word・Excel・PDF・メール・ファイル管理で毎回止まらない状態に近づけることです。
独学で足りる人は、わからないことを検索でき、画面が少し違っても応用できる人です。MOSの試験範囲や市販テキストを使い、必要な操作だけ確認すれば十分な場合もあります。
一方で、用語がわからず検索できない人、印刷や保存で毎回不安になる人、独学だと後回しになる人は、講座を使った方が早いことがあります。講座の利点は、学ぶ順番が決まっていて、止まったところを確認しやすいことです。
講座は行政書士業務そのものを教えるものではありません。あくまで、Word・Excelの基本操作を一度体系的に確認するための選択肢として考えるとよいです。
判断基準:開業前にどこまでできればいいか
行政書士開業前の目安としては、次の状態を目指すとよいと思います。
- Wordで1〜2ページの案内文を作れる
- Wordの表や余白をある程度調整できる
- Excelで簡単な一覧表や計算表を作れる
- Excelで印刷範囲を調整できる
- PDFの保存・結合・分割ができる
- メールにファイルを添付できる
- 案件ごとにフォルダを分けて管理できる
- バックアップ先を決めている
- 2段階認証や共有リンクの危険性を理解している
これが全部完璧にできなくても、開業はできます。
ただし、苦手な項目が多い場合は、開業前に少し時間を取って確認しておく方が安心です。
逆に、このあたりが問題なくできる人は、パソコンスキルそのものよりも、業務用の書類作成、ホームページ、会計、集客などに時間を使った方がよいと思います。
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まとめ:資格より「実務で止まらない状態」を目指す
行政書士開業に、高度なITスキルは必須ではありません。
ただし、Word、Excel、PDF、メール、ファイル管理で毎回止まる状態だと、開業後の負担は大きくなります。
MOS資格を取ること自体が目的ではありません。
大事なのは、Word・Excelの基本機能を一通り知り、実務で止まらない状態に近づけることです。
独学で進められる人は、独学で十分です。
一方で、独学だと後回しになりそうな人、画面操作で止まりやすい人、Word・Excelを体系的に触ったことがない人は、MOS対策講座やパソコン教室を使うのも選択肢です。
開業準備では、パソコン本体を買うだけでなく、自分がその道具をどの程度使えるかも確認しておくと安心です。