行政書士として開業すると、実務そのものとは別に「経理をどうするか」という問題が出てきます。
開業費、事務用品、書籍代、会費、通信費、交通費、売上、入金確認。ひとつひとつは小さな金額でも、あとからまとめて整理しようとするとかなり面倒です。
売上がまだ少ない時期でも、経費や証憑の管理は発生します。会務の報酬、交通費、現金受領、少額の日当、カード明細、メールで届いた領収書などは、最初に置き場所や記録方法を決めておかないと曖昧になりやすいです。
ただし、行政書士の場合は、一般的な個人事業主と少し違う注意点があります。
特に分けて考えたいのが、依頼者から報酬を受けたときの領収証です。会計ソフトは、帳簿付け、経費管理、確定申告を楽にする道具です。一方で、行政書士業務の報酬領収証や業務上の記録まで、会計ソフトが全部自動で解決してくれるわけではありません。
この記事では、行政書士開業に使う会計ソフトについて、freee、マネーフォワード、弥生、Excel管理を比較しながら、開業費、経費管理、確定申告、電子取引データ、行政書士の領収証運用を分けて整理します。
結論
行政書士として個人事業主で開業するなら、会計ソフトは早めに用意しておくと経理は楽になります。
ただし、会計ソフトはあくまで「税務・会計上の記録」を助けるものです。行政書士として依頼者に交付する報酬領収証は、行政書士法施行規則や日本行政書士会連合会の様式、所属行政書士会の案内を確認して、別に運用する必要があります。
大まかな選び方は、次のように考えると分かりやすいです。
| 選択肢 | 考え方 |
|---|---|
| 弥生 | 定番感、コスト面、税理士への相談しやすさを重視する人向け |
| freee | 操作感が合う人には便利。ただし独特で分かりにくいと感じる人もいるため、必ず試して判断 |
| マネーフォワード | 操作画面の分かりやすさや家計簿アプリでの馴染みを重視する人向け。ただし直近の不正アクセス事案を踏まえ、最新情報を確認して慎重に検討 |
| Excel管理 | 件数が少ない時期の補助には使えるが、確定申告・証憑管理・電子取引データ保存まで抱え込むのは慎重に |
どれか1つが絶対に正解というより、自分が毎月続けやすく、税理士や税務署にも確認しやすい形を選ぶのが大切です。
会計ソフトでできることと、できないこと
会計ソフトで楽になるのは、主に次のような作業です。
- 売上や入金の記録
- 経費の記録
- 開業費の整理
- 銀行口座やクレジットカード明細の取り込み
- 確定申告書類の作成補助
- レシートや領収書データの保存
- 電子取引データの整理
一方で、行政書士業務では、会計ソフトだけに任せにくい部分があります。
代表例が、依頼者へ交付する報酬領収証です。行政書士法施行規則第10条では、報酬を受けたときに日本行政書士会連合会の定める様式により正副二通の領収証を作成し、正本を依頼者へ交付し、副本を保存することが定められています。
そのため、会計ソフトに一般的な領収書作成機能があっても、それをそのまま行政書士の報酬領収証として使えるとは考えない方が安全です。
会計ソフトは、売上計上、入金確認、経費管理、確定申告のために使う。行政書士としての領収証は、日行連の様式や所属行政書士会の案内を確認して管理する。このように分けて考えるのがおすすめです。
売上が少なくても記録は必要
開業直後は、まだ売上が少ないことも多いです。
それでも、支出や証憑は開業前後から発生します。
たとえば、次のようなものです。
- パソコン、プリンター、Office、PDFソフトなどの購入費
- 書籍代、研修費、会費
- ホームページ、名刺、電話番号などの費用
- 登録前後の交通費
- 会務に関する報酬や日当
- 現金で受け取った報酬
- メールで届いた領収書や請求書
- Webからダウンロードしたカード明細や利用明細
こうした記録を後回しにすると、確定申告前に「これは何の支出だったか」「領収書はどこにあるか」と探すことになります。
会計ソフトを使うかどうかにかかわらず、最初から「どこに保存するか」「現金受領をどう記録するか」「電子取引データをどう保管するか」を決めておくと、後で慌てにくくなります。
freee、マネーフォワード、弥生、Excelの比較
会計ソフトは、料金だけでなく、続けやすさ、入力画面の分かりやすさ、税理士への相談しやすさ、電子取引データの保存しやすさで選びます。
弥生は定番感とコスト面で候補にしやすい
弥生は、会計ソフトとしての定番感があります。
画面や考え方が比較的「会計ソフトらしい」ため、税理士に相談するときにも話が通じやすい場合があります。コスト面を重視したい人や、昔ながらの会計ソフトに近い操作感がよい人には候補にしやすいです。
一方で、クラウド連携や自動化の使いやすさは、他のサービスと比べて自分に合うか確認した方がよいです。プラン内容や料金は変わるため、契約前に公式情報を確認しましょう。
freeeは操作感が合う人には便利
freeeは、簿記の知識がなくても入力しやすいように設計されているサービスとして紹介されることが多いです。
ただ、実際には「独特の考え方に慣れるまで難しい」「直感的でない」と感じる人もいます。会計ソフトらしい仕訳画面に慣れている人ほど、freeeの操作感が合わない場合もあります。
freeeを選ぶ場合は、いきなり本契約するのではなく、無料期間やデモ画面で、自分が毎月続けられそうかを確認するのがおすすめです。
マネーフォワードは画面の分かりやすさで選ぶ人もいる
マネーフォワードは、操作画面が比較的とっつきやすく、数字や明細の見え方が分かりやすいと感じる人もいます。
特に、普段から家計簿アプリのマネーフォワードを使っている人は、画面の雰囲気に馴染みがあり、会計ソフトとしても入りやすかったという声があります。毎月の経理は続けることが大事なので、「見た瞬間に苦手意識が出にくいか」は意外と大切です。
ただし、2026年5月1日に、マネーフォワードはGitHubへの不正アクセス発生に関するお知らせを公表しています。公式発表では、GitHubリポジトリがコピーされたこと、個人情報の一部流出の可能性、銀行口座連携機能の一時停止などが説明されています。
この件だけでサービス全体を否定する必要はありませんが、開業準備中の読者に積極的に勧めるには慎重になりたいところです。検討する場合は、最新の調査状況、再発防止策、銀行連携の状況を公式情報で確認してから判断しましょう。
Excel管理は補助なら使える
売上や経費の件数が少ないうちは、Excelやスプレッドシートで補助的に管理することもできます。
ただし、確定申告、証憑保存、電子取引データ保存、銀行・カード明細の整理までExcelだけで抱え込むのは慎重に考えた方がよいです。
特に、PDF領収書、メール請求書、Web明細、カード明細などが増えると、ファイルの保存場所と帳簿の記録がずれやすくなります。Excelを使う場合でも、証憑の保存ルールは別に決めておきましょう。
電子帳簿保存法は軽くでも意識する
電子帳簿保存法は、帳簿や書類を電子データで保存する場合や、電子取引データを保存する場合のルールです。
行政書士開業直後に特に意識したいのは、電子取引データです。
たとえば、次のようなものがあります。
- メールで受け取った請求書
- PDFの領収書
- Webからダウンロードした利用明細
- クレジットカードの明細
- クラウドサービスの請求データ
会計ソフトには、電子帳簿保存法対応をうたう機能が用意されていることがあります。ただし、ソフトを使っていれば自動的に全部OKというわけではありません。
保存方法、検索できる状態、訂正削除の履歴、スキャナ保存の要件など、細かい点は個別事情によって変わるため、国税庁の最新情報や税理士に確認してください。
商品・サービス候補
ここまでの判断を踏まえると、会計ソフトは「毎月続けられるか」「税理士や税務署に確認しやすいか」「証憑や電子取引データを整理しやすいか」で選ぶのがよいです。
やよいの青色申告オンライン
弥生は、定番感やコスト面を重視したい人にとって候補にしやすい会計ソフトです。会計ソフトらしい画面に抵抗がない人や、税理士に相談しながら進めたい人は、プラン内容を確認してみるとよいと思います。
freee
freeeは、操作感が合えば便利に使える候補です。ただ、独特で分かりにくいと感じる人もいるため、契約前に画面や入力の流れを試し、自分が毎月続けられそうかを確認しておくのがおすすめです。
マネーフォワード
マネーフォワードは、画面の見やすさや家計簿アプリでの馴染みを重視する人にとって候補になります。ただし、直近の不正アクセス事案もあるため、利用を検討する場合は公式サイトで最新状況を確認してから判断しましょう。
会計・確定申告の入門書
会計ソフトを使う場合でも、確定申告や電子帳簿保存法の基本をざっくり知っておくと安心です。税制や制度は変わるため、個人事業主向けの新しい入門書を1冊手元に置いておくと、迷ったときに確認しやすくなります。
よくある質問
行政書士に会計ソフトは必要ですか?
法律上、必ず会計ソフトを使わなければならないわけではありません。ただ、開業費、経費、売上、入金、確定申告を管理する必要はあります。会計ソフトを使うと、記録と申告準備はかなり楽になります。
会計ソフトの領収書機能は使えますか?
税務・会計上の記録には使える場面があります。ただし、行政書士の報酬領収証として、会計ソフトの一般的な領収書テンプレートをそのまま使えるとは考えない方が安全です。行政書士法施行規則、日本行政書士会連合会の様式、所属行政書士会の案内を確認してください。
freee、マネーフォワード、弥生のどれがよいですか?
弥生は定番感やコスト面を重視する人、freeeは操作感が合う人、マネーフォワードは画面の分かりやすさや家計簿アプリでの馴染みを重視する人の候補になります。ただし、マネーフォワードは直近の不正アクセス事案を踏まえ、最新情報を確認して慎重に検討した方がよいです。
売上が少ない時期ならExcelだけでよいですか?
件数が少ない時期の補助管理ならExcelでも対応できる場合があります。ただし、確定申告、証憑保存、電子取引データ保存までExcelだけで抱え込むのは大変です。最初から会計ソフトを使うか、少なくとも証憑の保存ルールは決めておきましょう。
電子帳簿保存法は何を意識すればよいですか?
まずは、メールやWebで受け取った請求書、領収書、利用明細などの電子取引データを、データのまま保存する必要がある点を意識しましょう。保存要件は細かいため、国税庁の最新情報や税理士に確認してください。
税理士に依頼していても会計ソフトは必要ですか?
税理士に依頼している場合でも、日々の売上や経費を自分で把握することは大切です。どのソフトを使うべきかは、依頼する税理士が対応しているサービスにもよります。契約前に相談しておくとスムーズです。
まとめ
行政書士として個人事業主で開業するなら、会計ソフトは早めに用意しておくと安心です。
ただし、会計ソフトは、行政書士業務の報酬領収証や業務上の記録まで全部自動で解決するものではありません。税務・会計上の記録と、行政書士としての領収証運用は分けて考えましょう。
売上が少ない時期でも、開業費、経費、証憑、電子取引データの整理は発生します。会務報酬、交通費、現金受領、少額日当、メール領収書、カード明細などは、後から思い出すより、最初から記録方法を決めておく方が楽です。
会計ソフトは、弥生、freee、マネーフォワードのどれかが絶対に正解というものではありません。弥生は定番感、freeeは操作感、マネーフォワードは画面の分かりやすさと直近事案への確認、Excelは補助管理としての使い方を見て、自分が続けられる形を選びましょう。
税務判断に関わる部分は、会計ソフトだけで断定せず、必要に応じて税理士や税務署に確認してください。