※本記事は、行政書士として開業した個人の実体験をもとにした開業準備メモです。登録申請や事務所要件の細かな扱いは、所属予定の都道府県行政書士会によって異なる場合があります。実際に準備する際は、必ず各行政書士会の案内を確認してください。
行政書士として開業する前後は、思った以上に細かいものを準備します。
職印、表札、鍵付き収納、PC、プリンター、机、椅子、名刺、文房具、書類を保管する場所。ひとつひとつは小さな買い物でも、まとめるとそれなりの金額になります。
必要なものを考える前に、開業スタイル別の費用感も見ておくと、どこまで準備するか決めやすくなります。
私も開業前後に「必要そう」と思うものをいろいろ揃えました。ただ、実際に使ってみると、最初に買ってよかったものもあれば、後からで十分だったもの、なくても困らなかったものもあります。
この記事では、行政書士開業に必要なものを、最初に優先したいもの、あると楽になるもの、後回しでよいものに分けて整理します。自宅や小さな事務所から、無理なく開業準備を進めたい人向けのまとめです。
まず結論:最初から全部そろえなくてよい
行政書士開業で最初に考えたいのは、立派な事務所を作ることではありません。
先に整えたいのは、次の3つです。
- 登録や事務所確認に関わるもの
- 書類作成や連絡に必要な実務環境
- 個人情報や書類を安全に扱う保管環境
この3つに関わるものは早めに準備した方が動きやすくなります。反対に、見栄えのための高額な什器、紙の専門書、大きな応接セットなどは、業務内容や来客の有無が見えてからでも間に合うことがあります。
開業準備では、不安だから全部買う、という流れになりがちです。ただ、最初に全部を完璧に揃えようとすると、使わないものまで買いやすくなります。
まずは最低限の業務環境を作り、実際に動きながら必要なものを足していく。このくらいの考え方で十分です。
この記事は「何を買うか」の整理です。「どの順番で何を確認するか」を見たい場合は、登録前から開業直後までを時系列でまとめたチェックリストがあります。
行政書士開業で最初に準備したいもの
最初に準備したいものを、ざっくり分けると次のようになります。
| 分類 | 主なもの | 考え方 |
|---|---|---|
| 登録・事務所表示 | 職印、表札・事務所表示、登録証や報酬額表の掲示用品 | 行政書士会の案内や登録時期を確認して準備する |
| 実務環境 | PC、Office、プリンター・複合機、PDF環境、メール | 書類作成と連絡が止まらない状態を作る |
| 書類保管 | 鍵付き収納、書庫、ファイル、封筒 | 個人情報や業務書類を安全に保管する |
| 作業環境 | 机、椅子、文房具、照明 | 長時間の書類作成ができる環境にする |
| 対外的な道具 | 名刺、ホームページ、電話番号 | 開業直後の営業や連絡に必要な範囲から整える |
この一覧を見て「全部すぐ買わないと」と考える必要はありません。優先順位をつけることが大事です。
登録や事務所確認に関わるもの
職印
行政書士として登録・開業するなら、職印は早めに確認したいものです。
職印は業務で使う印鑑なので、サイズ、表記、書体、作成時期を所属予定の行政書士会の案内に合わせて確認します。高級なものを最初から用意する必要はありませんが、登録や業務に使えるものかどうかは大事です。
ネット通販で作る方法もありますし、地元の印鑑店に相談する方法もあります。登録前に作る場合は、事務所名や表記を間違えると作り直しになるので、先に確認しておく方が安全です。
表札・事務所表示
行政書士事務所として登録した後は、事務所として確認できる表示も必要になります。
ただし、最初から大きな看板や高額な屋外看板を作る必要はありません。自宅開業ならプライバシーや防犯、賃貸物件なら管理規約や大家さんへの確認も関係します。
登録前から「行政書士」「行政書士事務所」と表示してよいわけではないので、作る時期にも注意が必要です。まずは行政書士会の案内を確認し、登録後に無理なく出せる表示を考えるくらいでよいと思います。
登録証や報酬額表を掲示するフレーム
登録後は、登録証や報酬額表などを掲示する場面があります。
掲示用品は高いものでなくても構いません。見やすく、事務所内で破損しにくく、必要な書類をきちんと掲示できれば十分です。
A3フレーム
登録証や報酬額表を掲示する場合は、A3サイズのフレームがあると使いやすいです。事務所確認や来客時に見える場所へ掲示する前提で、派手さよりも見やすさを優先すると選びやすくなります。
実務を止めないために必要なもの
PC
PCは、行政書士開業では必須に近いものです。
書類作成、メール、PDF確認、オンライン研修、会計処理、ホームページ更新など、多くの作業でPCを使います。スマホやタブレットだけで開業準備から実務まで進めるのは、かなり厳しいと思います。
高性能なPCである必要はありませんが、安すぎて動作が重いPCを選ぶと、毎日の作業がかなりつらくなります。Word、Excel、PDFを同時に扱うことを考えると、メモリ16GB、SSD搭載のWindowsノートPCを標準ラインに考えると無難です。
PC本体の選び方は、サイズ、Windows/Mac、外部モニターの有無まで関係します。この記事では全体像にとどめ、細かいスペックは個別記事で確認するのがよいです。
プリンター・複合機
行政書士業務では、紙をまったく使わない運用はまだ難しいです。
申請書類、本人確認書類、控え、郵送書類、スキャンして保存する資料など、印刷とスキャンの場面は開業後も出てきます。とはいえ、開業直後から高額な業務用複合機を入れる必要があるかは別です。
最初は、A4対応、ADF付き、スキャンしやすい家庭用複合機で足りる人も多いと思います。FAXやA3対応は、業務分野、相手先、紙書類の量、置き場所で判断します。
Office・PDF・メール環境
PC本体だけでなく、Word、Excel、PDF、メールの環境も必要です。
行政の様式はWordやExcelで配布されることが多く、PDFの確認や結合、印刷もよく使います。無料ツールで足りる場面もありますが、レイアウト崩れや印刷崩れが困る場面では、正規のOffice環境を用意した方が安心です。
このあたりは、ものを買えば終わりというより、最低限使える状態にしておくことが大事です。
実務を止めないためには、備品や作業環境だけでなく、依頼者向けの案内文、委任状、確認書類、料金説明など、相手に渡す資料も必要になります。
書類保管と作業場所を整える
鍵付き収納・書庫
行政書士は、個人情報や重要書類を扱う仕事です。
開業直後は書類量が少なくても、相談資料、本人確認書類、申請書控え、郵送記録など、保管すべきものは少しずつ増えます。自宅開業でも、家族の生活空間と業務書類を分けておく方が安心です。
最初から大型書庫を買う必要はありませんが、鍵付きでA4書類を保管できる場所は早めに用意しておきたいところです。
鍵付きワゴン
小さく始める場合は、鍵付きワゴンが扱いやすい候補になります。机の近くに置きやすく、開業直後の書類量ならまずはこれで足りることもあります。
机
机は、すでに自宅にあるものを使えるなら、それで始めても構いません。
ただ、行政書士業務ではPCだけでなく、紙の資料、封筒、本人確認書類、メモ、ファイルを同時に広げることがあります。小さすぎる机だと、書類作成や確認作業がしにくくなります。
開業初期は高級なデスクよりも、A4書類とPCを無理なく置ける広さ、安定感、置き場所との相性を優先すると失敗しにくいです。
シンプルな事務机
来客用の見栄えよりも、まずは自分が毎日作業しやすいことを優先するなら、シンプルな事務机で十分です。書類を広げる余白があるかだけは確認しておくと安心です。
椅子
椅子は、軽く見られがちですが、毎日作業するならかなり重要です。
行政書士の仕事は、調べもの、書類作成、メール、資料整理など、座って行う作業が多くなります。最初から高額な椅子にする必要はありませんが、長時間座ってしんどい椅子だと、地味に効いてきます。
見た目だけでなく、座面の高さ、背もたれ、机との相性を確認して選ぶ方がよいです。
事務用チェア
まずは標準的な事務用チェアで十分です。来客用ではなく、自分が毎日座る椅子として、安定して作業できるものを選ぶと開業後の負担を減らせます。
名刺・電話・ホームページは営業の形で変わる
名刺
名刺は、開業直後から必要になりやすいものです。
交流会、会務、挨拶、相談会など、紙の名刺があると動きやすくなります。ただし、登録情報、事務所名、電話番号、メールアドレス、事務所所在地、ホームページURLが固まる前に大量発注すると、作り直しになることがあります。
最初は少なめに作り、内容が固まってから追加するくらいでよいと思います。
電話番号・FAX
電話番号やFAXは、業務分野と相手先によって必要性が変わります。
個人携帯番号をそのまま公開すると、営業電話やプライベートとの切り分けで困ることがあります。固定電話、050番号、事業用スマホ、オンラインFAXなどの選択肢を、業務内容が見えてから選ぶ形でもよいです。
開業準備段階では、番号を名刺やホームページに載せる前に、変更しにくい情報だと意識しておくことが大事です。
ホームページ
ホームページは、作ればすぐ依頼が来るものではありません。
一方で、名刺を渡した相手や紹介を受けた人が「どんな事務所か」を確認する場所としては役立ちます。開業初期は、集客サイトというより、信頼確認用のページとして最低限整える考え方でも十分です。
物以外に整えるもの
開業準備で必要になるのは、備品だけではありません。
実際に業務を始めると、依頼者向けの案内文、委任状、確認書類、料金説明、納品時の資料なども必要になります。こうした資料は、業務内容が決まってから整えていくものですが、最初はどのくらい作ればよいのか分かりにくい部分です。
備品を揃えるだけでなく、依頼者に何を説明し、どんな資料を渡すのかも少しずつ準備しておくと、開業後に動きやすくなります。
後回しでよいもの
高額な応接セット
来客が多い事務所なら、応接スペースは必要です。
ただ、自宅開業やオンライン中心で始める場合、最初から立派な応接セットを買う必要はありません。まずは座って話せる最低限の場所を確保し、来客が増えてから整える形でも間に合います。
紙の六法や専門書
紙の六法や専門書は、持っていると安心感があります。
ただ、開業準備品として最優先かというと、人によります。登録後の研修、行政書士会の資料、実際に取り扱う業務分野が見えてから、必要な本を買う方が無駄になりにくいです。
A3対応プリンターや大型書庫
A3対応プリンター、大型書庫、高額な什器は、必要になれば便利です。
しかし、最初から全員に必要とは限りません。紙書類の量、業務分野、来客の有無、事務所の広さを見てから判断しても遅くないものです。
費用感の目安
開業準備にかかる費用は、すでに持っているものによって大きく変わります。
ざっくり考えるなら、次のようなイメージです。
| 準備レベル | 内容 | 目安 |
|---|---|---|
| 最低限 | 既存PCや既存机を使い、職印・表札・名刺・収納などを足す | 3万〜8万円程度 |
| 標準 | PC、複合機、机、椅子、収納まで一通り整える | 10万〜25万円程度 |
| 来客対応も整える | 応接スペース、掲示物、見た目の整備まで行う | 25万〜50万円程度 |
もちろん、PCやプリンターを買い替えるかどうかで金額は大きく変わります。開業費を抑えたい場合でも、PCと書類保管だけは削りすぎない方がよいと思います。
よくある質問
行政書士開業前に全部買うべきですか?
全部買う必要はありません。
開業前に優先したいのは、登録や事務所確認、書類作成、書類保管に関わるものです。専門書、高額な什器、大型の設備は、必要になってからでも間に合うことがあります。
自宅にあるPCやプリンターを使ってもよいですか?
使えるなら、それで始めても構いません。
ただし、PCが古くて動作が重い、OfficeやPDF作業でつまずく、プリンターのスキャンが不便といった状態だと、開業後の実務に影響します。古い機器を使う場合は、書類作成とスキャンが問題なくできるかだけ先に確認しておくと安心です。
鍵付き収納は本当に必要ですか?
私は、早めに用意した方がよいと思います。
行政書士は個人情報や重要書類を扱います。開業直後は書類が少なくても、保管場所を決めておくと、資料が散らばりにくくなります。大きな書庫でなくても、鍵付きワゴンやキャビネットから始める方法があります。
名刺やホームページは開業前に作ってよいですか?
作ること自体は検討できますが、情報が固まってからが安全です。
事務所名、事務所所在地、電話番号、メールアドレス、ホームページURLは、あとから変えると作り直しになります。特に名刺は大量発注せず、最初は少なめに作る方が動きやすいです。
会計ソフトは開業前から必要ですか?
開業前から必ず有料ソフトを契約しなければならない、というものではありません。
ただ、開業費、経費、領収書、電子取引データの管理は開業準備中から始まります。Excelで管理するにしても、会計ソフトを使うにしても、記録の方法は早めに決めておく方が後で楽です。
まとめ:必須度の高いものから順番に整える
行政書士開業準備では、必要そうに見えるものがたくさんあります。
ただ、最初から完璧な事務所を作る必要はありません。まずは、登録や事務所確認に関わるもの、書類作成に必要な環境、書類を安全に保管する環境を優先します。
職印、表札、PC、プリンター、名刺のように個別の判断が必要なものは、この記事だけで決めきろうとせず、それぞれの個別記事で確認すると失敗しにくくなります。
開業準備は、お金をかけようと思えばいくらでもかけられます。だからこそ、今すぐ必要なものと、必要になってから買えばよいものを分けることが大事です。
まずは最低限の環境を作る。実際に動いてみる。必要になったものを買い足す。
この順番で十分だと思います。